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2009年7月31日 (金)

南の島から



 太平洋に浮かぶ小さな島からお便りを頂きました。

 土井基嗣(どいもとつぐ)さん30歳。沖縄県南大東島の診療所に勤務する、島にたった一人のお医者さんです。

 沖縄本島の東に浮かんだ周囲20キロ、人口1,200人ほどの小さな島。大東諸島付近には周囲400kmにわたって大きな陸地がないため、いざという時 に『たった一人のお医者さん』の果たす役割はとても大きいのですが、土井さんは「たしかに地域にとっては必要だけれども、とっても地味な仕事。何もないの が一番ですから」と笑います。一つ一つ言葉をゆっくりと選びながら、穏やかに話すその口ぶりからは誠実な雰囲気が伝わってきます。

 出身は北海道札幌市。地元の高校を卒業したのち琉球大学医学部に進み、沖縄へ。やがて、病気になってしまう前に病気になりにくい心と体を作る『予防医学』に興味を持ち始め、徐々に地域医療の方向に進み始めます。住民に密着して生活習慣などにも介入できる地域医療は予防医学の実践の場としては願ってもない場所と考えたからです。

 大学五年のときに参加したイギリスの地域医療研修コースでは、現在のお仕事にも生かされることになるひとつの教訓を得ました。「地域医療では地域が必要としていることを行う――」。人口や交通の状況、食事や生活の習慣など、立地条件によって異なる特色に合わせて、ベストの方法を現地で探らなくてはならない、ということです。

 地域医療への熱意を持って島にやってきた若い土井さんを、島の人たちはとても温かく迎えてくれました。診療室の中だけでなく、村で生活する中でも顔を合わせることで、治療の経過を確認できたりもします。都会にはないこの『人と人の距離の近さ』はこの島の持つ良さ、特色の一つです。ただ、一方では、治療や指導に当たる上で、その特色が思わぬ障害になることがあります。

「あまり仲良くなりすぎると、『タバコをやめたほうがいいよ』というひとことも言いづらくなっちゃって」。

 まるで自分の喫煙を反省しているような話し振り(ご自身はもちろん非喫煙者です)からは、普段は天真爛漫で元気いっぱいの地元のお父さんの診断結果を前にして、シャイな新米医師がなかなか禁煙を言い渡せないで頭を掻いている場面が目に浮かぶようです。けれど、しっかりとした生活指導を行って病気の発生そのものが少ない地域にすることは医師として重要な仕事。いざという時に住民にしっかりとアドバイスできるように、普段から住民との距離感をどのぐらいに保つのか、それに一番苦心するそうです。

 毎週欠かさず観ているという『情熱大陸』の中で、最近、土井さんの印象に残っているのは、ブックデザイナーの幅允孝さん、パティシエの柿沢安耶さん、生命科学者の上田泰己さんなど。いずれも土井さんと同じ世代で目標を持って頑張っている人たちです。

「見据えている方向がブレていない、流されていないところが好き。自分もそうありたいなあと思いますから」。

 今後もずっと地域医療に携わっていきたいとおっしゃる土井さん。「自分はまだ『発展途上の先生』。まだまだ成長していかないと」と語るその様子からは、ご自身も番組に登場する若者たちに負けないぐらいしっかりと自分の将来を見つめているように感じます。

『情熱大陸』だってまだまた発展途上です。これからも同じ成長していく仲間として、南の島から温かく見守ってくれると嬉しいです。

ブックディレクター・幅允孝篇(2008年10月19日放送)

パティシエ・柿沢安耶篇(2008年10月26日放送)

生命科学者・上田泰己篇(2009年3月1日放送)

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7月 31, 2009 みんなの情熱大陸 |

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