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2009年3月13日 (金)

長瀬智也さんの本棚



幅允孝

 誰に言ったこともないし、これからも言うことはないと思うのだが、僕は意外とジャニーズが好きだ。日本において、女性のアイドルといえば、花の中三トリ オ(当時)からモーニング娘。やAKB48なんかまで様々にいるわけだが、男性のアイドルとなると完全にジャニーズの独壇場である。そして今回、そのジャ ニーズの数少ないバンド形式のグループTOKIOのヴォーカル長瀬智也である。これまで、バラエティやいくつかのドラマで彼の姿を見てきたが、背の高い彼 が演じてきた野方図で圧倒的に自由な(でも、実はいろいろ気遣っている)役を見るにつけ、これは絶対普段の彼自身と重なっているはずだと思っていた。そし て、やはりそうだった。ある程度は。野方図は当てはまっていないが、自由であり、常に人を楽しませ、自分も楽しむところは共通している。

 長瀬が少年時代に熱中し、そして休日には今も続けているスケートボード。自分が滑る場所全てが遊び場になるスケボーは、彼にぴったりだったのだろうし、むしろそれが彼を作ったとも言えるかもしれない。自身子供の頃からスケボーをしてきた写真家平野太呂の写真集『POOL』は、スケーターがバンク(傾斜)として滑った、アメリカの西海岸にある空き家となった高級住宅街のプールを撮影したものだ。廃墟となった虚栄の象徴を遊び場にしてしまう、スケーターたちの自由さに思いを馳せると、そこに長瀬智也の影を追うことができそうな気がしてくる。

 大人になって、子供のようにいることは、意外に難しい。個性を重要視される芸能界においても、そこは変わらないと思うのだが、長瀬智也という男は、男の子のままでいる。同じTOKIOのメンバーである国分太一に、「何も出てこないですよ。ふわっと生きている。かしこまったところを見たことがない。奇跡の男ですよ」と言わしめる彼のとらえどころのなさは、世の中(大人)の規範に絡めとられず、目の前のことに対して、動物的な素直さで反応しているということなのかもしれない。まるでワクワクする日々の冒険を楽しんでいるようだ。『冒険図鑑』は、動物的な感覚が最も楽しめる野外生活の案内書だ。歩く、食べる、寝る、作って遊ぶ、動・植物との出会い、危険への対応の6章からなるこの本は、遊びごころと好奇心を、どうやって楽しみながら生活にアジャストさせればいいのかを、ほぼ全ページに渡る詳細なイラストで示してくれる。彼は、周囲の人たちが冒険図鑑を読む代わりに、日々の楽しみ方を身をもって示してくれているような気がしている。長瀬のような、主体的に楽しめるエンターテイナーは圧倒的に場の空気を暖めてくれる。

 長瀬は“演技において、一番大切にしていることは?”という質問に、「(演じる)そのときに、その場で何を感じるかです。計算ではできないことばかりです」と答えた。彼がいう現場での即興性の重要さは、その感性の鋭さと自分自身の感じることを大切にしたいという意志の強さが言わせたことだろう。ギタリストであり、即興演奏家として知られるデレク・ベイリーの『インプロヴィゼーション』は、タイトルのとおり、様々な音楽ジャンルにおける即興演奏についての本だ。様々な音楽の歴史を敷衍した上でのベイリーが語る「イディオムの解体」「規則の崩壊」は、ただ即興という言葉だけを抜いて長瀬の演技論に援用はできないが、今ここで起きている事象をしっかりと感じ、目を開いて見ようとする彼の生き方と、細かな点と点ではあるが、繋がっているのではないかと、彼のアンプラグド・ライブの熱唱を見て感じ入っている。それにしても、ステキな男子だ。

タレント・長瀬智也篇(2009年1月25日放送)

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3月 13, 2009 あの人の本棚は、きっと |

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