漢字三文字のクセものたち
大島新(おおしまあらた)というディレクターがいる。彼はこれまでに10本近く『情熱大陸』を担当してきた。今年でいえば、編集者の見城徹篇と作詞家の秋元康篇がそうだ。偶然にも名前が漢字3文字のお二人だが、なにより両者いずれ劣らぬ当世きってのクセもの(失礼!)である。そして、その2人を取材した大島ディレクターも、名前が漢字3文字で、しかもこれまたなかなかのクセものなのである。
なんというか、大島ディレクターは、濃~い。誰を取材しても、あるいは『情熱大陸』以外の番組を担当しても、手がけた番組は彼のものだとすぐにわかる。必ず大島ディレクターのニオイがぷ~んと漂ってくる。
一般的にドキュメンタリーのロケは、取材対象になるべく<自然のまま>でいてもらうのが基本である。ディレクターやカメラマンは空気のような存在となり、いつのまにか取材対象に寄り添って、そこから垣間見える、あるいは、にじみ出る素顔を引き出す――というのが常道だろう。でも、大島ディレクターはちょっと違う。もちろんそういう取材スタイルはとりつつも、いつもどこかで、取材対象に真正面からガチンコ勝負を挑む。たとえば、秋元康篇などはその典型だろう。無機質なスタジオに秋元さんを呼び込んで複数のカメラで取り囲みインタビューを試みたことに始まり、30分を通して秋元さんvs大島ディレクターという静かなバトルをドキュメントしていたといっていい。大島ディレクターは、そういう<自然のまま>ではない、不自然な状況の中で、相手の本質を描きだそうとする。料理に喩えれば、少量の塩で素材のうまみを引き出すというよりも、大島新といういささか刺激的なスパイスを効かすことで、その素材のもつ新たな味を発見しようというような感じだ。そんなスタイルで大島ディレクターが映し出すのは、取材相手の「素(す)」というよりは、「地(じ)」といったほうがいいかもしれない。
もちろん、そんな彼のやり方には批判もある。ディレクターが自意識過剰だとか、自分の演出手法に溺れているとか、視聴者が見たいのは秋元さんの日常であってディレクターの演出プランではないとか。
それも、また、的を射ていると思う。
今月、大島ディレクターが初めて監督をつとめたドキュメンタリー映画が公開された。主人公は、唐十郎さん。これまた漢字3文字の名前、そして、かなりのクセものである。きっかけは、大島ディレクターが『情熱大陸』で去年、唐さんを取材したことだった。番組放送後にはディレクターとしての達成感はあったものの、一方で、「これだけではないはず」だという気持ちが湧いてきたらしい。ひとことでいえば、唐さんというひとがテレビサイズに収まらないと感じたのだ。そして、30分という時間とか、子供からお年寄りまで楽しめるようにとか、ひらたくいえば視聴率とか、そういう枠組みから離れて唐さんを描いてみたいと思ったという。撮影は去年11月に唐さんが戯曲を書き始めるところからスタートし、およそ半年間。14人の劇団唐組がひとつの芝居を作り上げるまでをしつこいほど丹念に追った取材テープは180時間におよんだという。
映画のタイトルは『シアトリカル~唐十郎と劇団唐組の記録』。【シアトリカル】とは①演劇的な②芝居じみた、という意味。映画の内容については観てのお楽しみ、ということでここでは触れないでおくが、大島ディレクターらしい仕掛けがいくつか施されていて、このタイトルがつけられた理由と、彼のドキュメンタリーに対する考え方がよくわかる。観た後に僕は、思わず「ニヤリ」としてしまった。
ぜひ、多くのひとに見て欲しい――
と、友人のひとりとしてこの場を借りて宣伝させていただきました。職権乱用お許し下さい。今回は映画なので視聴率もでないし、大島ディレクターも少しは気が楽かと思いきや、観客動員数によって、上映期間が変わったりするそうです。なにとぞ皆様のあたたかいご支援をよろしくお願いします。
余談ですが、大島ディレクターのお父様のお名前も漢字3文字です。大島渚といいます。
12月 28, 2007 プロデューサーからの手紙 | Permalink
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